Bookcover
「DeLoreans文庫本カバー」読書の秋
オススメ文庫本(Vol.3)
<ブックカバー誕生の裏で>
きっかけは、2018年1月の「デロリアンズ懇親会」だった。そこで集まってくれた人たちに新商品の要望を聞いていたときのこと。お散歩帆布バッグと同じ生地で、ブックカバーを作って欲しいという意見が出た。
一応、ライターとして出版業界で働く者としてすぐ「それいいね!」と反応したが、同時に「そんなの欲しい人、いるの?」とも思った。しかしその人の「きっといると思いますよ!」という声に皆さんも賛同したので、「じゃ、作ってみようか」と勢いで出すことになった「DeLoreans文庫本カバー」。
そして発売に向けて準備を進めていた2018年3月16日の夜、自宅の階段から落ちて頭を強打してしまう。救急車で運ばれたが意識はなく、「頭蓋骨骨折」、「脳挫傷」、「外傷性くも膜下出血」で生死をさまよう。手術は成功したが後遺症残るだろう、少なくともライター業はもう出来ないだろうと嫁は医師から言われたそうだが、なぜか回復して、4月には退院している。
そして発注していた文庫本カバーが納品され、4月20日に発売されることになったが、そのタイミングで「文庫本カバーが出るんだから、オススメ文庫があった方がいい!」と思ったのか「発売記念オススメ文庫本(Vol.1)」と「オススメ文庫本(Vol.2)」を書いている。当時の記憶は曖昧でほとんど覚えていないが、読み返してみると本当に自分が好きな本のことについて述べている。怪我の軽い後遺症か、頭がぼうっとしてた時期なのに。
それは後になってからわかったことで、そのときは普通に考えて行動しているつもりだったが、あの頃は集中力がすぐ切れたり、突然猛烈な睡魔に襲われたりしたことが多々あった。それが次第になくなっていき、退院から半年くらいした頃だったか、「以前の感覚に戻ってきた」と感じたのだった。
そんなこんなで、「オススメ文庫本(Vol.2)」をアップしてから1年以上経過してしまったが、言い訳になるだろうか。正確には、書くことを忘れていただけなのだが。そして今回、スタッフから「読書の秋企画」でオススメ文庫をまた書いてみたらどうですかと言われたので、書くことした。前置きが長くなってごめんなさいよ。それではいってみよう。
忌野旅日記 (新潮文庫) 文庫
あれは中学2年の頃だった。はじめて生で、RCサクセションを観た。神戸国際会館で行われたライブに行ったのだ。アルバム「HEART ACE(ハートのエース)」が出た直後だったと思う。小学5年生のときに「い・け・な・いルージュマジック」を見て清志郎ファンになってから、念願の初ライブだった。
今ではそんなことないのかもしれないが、当時の中学生にとって、ライブのチケットは高くて買えなかった。3000円もするアルバムだってほいほい買えない。しかもライブ会場なんて行ったことがない未知の世界。映像では多少見たことがあるが(テレビで)、どんな雰囲気なのかは知らない。行く前からドキドキしていた。
会場に入ると薄暗く、ステージあたりがほんのりブルーに照らされている。リズムアンドブルースが流れ、人がぞろぞろ入ってきて座席が埋まっていく。これから何が起こるのか、中学生には全然想像出来なかった。そわそわしながら開場時間になると、急に照明がすべて落ちて客席が真っ暗になり、BGMも消えた。その瞬間、ザワザワしていた観客が静まり返り、次に「オォー!」とか「キャー!」とあちこちで歓声が上がる。
そんな中、メンバーだと思われる影がステージに現れ、それぞれ楽器を持つ。そして、いきなりびっくりするくらいの音量で演奏がはじまると同時に、ステージが煌々と照らされる。すると、舞台袖から清志郎が走りながら出てくる。そのとき「おぉぉぉぉー!キヨシローだ!」と鳥肌が立ったのを覚えている。
これまで家でさんざん聴いていた曲が目の前で演奏され、本物が目の前で歌っているという衝撃を、あのときはじめて味わったんだと思う。席は後ろの方だったが、それでも十分だった。それからは出来るだけライブに足を運ぶようになり、RCだけではなく、小さいライブハウスにも行くようになったのだった。
いかん。本と関係ないことを延々と書いてしまった。そんなわけでRCファンだった私は、この本も、もちろん読んでいる。1987年から「週間FM」で連載されていたものをまとめたもので旅日記とあるが、内容は交遊録のような感じだ。チャーや細野晴臣さんなどそうそうたるメンバーが登場するが、インタビュー雑誌などでは知ることのない、ミュージシャン同士の清志郎だからこそ見えるその人の人間臭さみたいなものが垣間見えて実に面白い。
ちなみに、本の中で登場する「オンナ占い師」とは、富士丸繋がりで知り合ったマーコさんのことで、「そんなにファンならいつか会わせてあげるね」と言われていたのだが、その夢は叶わなかった。最後になった武道館も、行ったんだよね。
(つづく、かも)
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代表取締役 穴澤賢
profile
1971年大阪生まれ。犬と猫と音楽と酒を愛するフリーライター。
2005年にはじめた「富士丸な日々」というブログが話題となり、
翌年同タイトルの本を出版。以後、エッセイやコラムを執筆する
ようになる。著書に「またね、富士丸。(集英社文庫)」
「明日もいっしょにおきようね(草思社)」
「Another Side of Music(ワーナー・ミュージック・ジャパン)」
「また、犬と暮らして(世界文化社)」などがある。
2015年11月に自ら犬と長年暮らした経験をいかしたもとに
商品を開発、販売するブランド「デロリアンズ」を立ち上げる。