私とうなぎ
誰にでも好物はあると思うが、私はうなぎだ。普段から食にあまり執着心がなく、一緒に食事をしているときに友人や嫁から「それ、少しちょうだい」と言われたら「はいどうぞ」といくらでも差し出すし、鍋を作ったときなどはみんなが美味しそうに食べている姿を見ている方が好きだ。
が、うなぎは違う。もし仮に鰻屋で嫁から「少しちょうだい」と言われたとしても「絶対に嫌だ」と言うだろう。食べ物に関してそれほど心が狭くなるのはうなぎくらいだ。それほど、うなぎが好きだ。
うなぎといっても、何でもいいわけではない。スーパーで売っているうなぎはまず買わないし、安っぽい店にある鰻丼なども食べない。どうせ食べるなら、美味しいうなぎを食べたいからだ。それくらい、うなぎ愛が深い。
実は子どもの頃からうなぎが好きだったわけではない。そんな裕福な家庭ではなかったし、ものすごく稀に食べたうなぎに感動した記憶はない。好きになったのは、上京してからだ。
20年近く前だったか。どこだったか忘れてしまったが、きっと貧乏だったから誰か先輩に食べに連れて行ってもらったんだと思う。そのときに「何これ、うなぎってこんなに美味しかったのか!」と、恩も店も忘れているのに驚いたことだけは覚えている。
後で知ったが、大阪では一般的に焼くだけなのに対し、関東では蒸してから焼くらしい。だから関東で食べるうなぎは、ふっくらしている。関西はパリッと香ばしい。どちらが好みかというだけで、私は関東風が好きなのだろう。
私のオススメ鰻屋
どうでもいい講釈はこのくらいにして、私のオススメの鰻屋を紹介したい。それが初台にある「赤垣」だ。私が初台に10年ほど暮らしていたこともあるが、食通の先輩も知っていたほど、そのスジでは有名らしい。
ここの鰻重は、本当にふっくらしていて、タレも絶品なのだ。ちょこんと付いてくる小さい味噌汁と漬物も趣がある。経済的にそんなに頻繁には行けなかったが、頑張って働いたときは自分へのご褒美として赤垣へ行っていた。
その後、鎌倉市腰越に引っ越したから行けてなかったが、この前都内で用事があったので、『不思議顔のまこ』でおなじみの敬子さんを誘って行ってきた。
少しまえに「しおん」を亡くし、最近食欲がないという敬子さんに「とにかくちゃんと食べなさい」と連れて行ったのだ。
久々に食べた赤垣の鰻重は、やっぱり美味しかった。最初は「こんなに食べれるかな」と言っていた敬子さんだったが、ペロリと完食していた。その美味しさが写真で伝わるかなぁ。
そんなわけで、うなぎ好き仲間は、機会があればぜひ行ってみてください。いきなり行くと入れないこともあるし、入れたとしても出てくるまでにすごく時間がかかるから、予約しておくことをオススメします。
〒151-0061 東京都渋谷区初台1丁目38−11
03-3370-2763